学会・研究会トピックス

国内学会レポート:日本臨床免疫学会

2008/10/17 第36回日本臨床免疫学会総会

ミニシンポジウム:ベーチェット病における抗サイトカイン療法

第36回日本臨床免疫学会総会(会長東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学分野宮坂信之教授)は10/17-18に東京新宿京王プラザホテルにて開催されました。

さて、10/17に行われたミニシンポジウム「ベーチェット病における抗サイトカイン療法」は久松理一先生(慶応義塾大学消化器内科)と私がオガーナイザーとなり、企画担当しました。学会事務局から「診療科の枠を越え、いつもの学会とは違う面子で、若い先生を中心にワイワイガヤガヤやってほしい。」との要望があり、日ごろベーチェット病の診療に携わる眼科、消化器内科、リウマチ内科各領域の若手・中堅の先生に演者として参加いただきました。これまで、ベーチェット病の病像は多様であるため、個々の病態に対応するにはいろいろな治療が必要であり、逆にすべての病状をカバーしうる単一の治療というのはありませんでした。今回はあえてインフリキシマブ治療を共通のキーワードとして、ぶどう膜炎だけでなく、難治性の腸管病変、神経病変に関してその臨床効果を発表いただき、問題点を提起いただきました。ここで、特に患者さんに、誤解のないようにお断りいたしますが、腸管病変、神経病変に対するインフリキシマブ治療は厚生労働省に認められていませんので、本学会で発表された成績は各施設の倫理審査の承認のもとに行われた試験的治療であることをご理解いただきたく存じます。

まず、園田康平先生(九大眼科)、北市伸義先生(北大眼科)にはインフリキシマブが使えるようになって、ベーチェット病のぶどう膜炎治療がどう変わってきたかを個々の施設での自験例を中心にその優れた効果について報告がありました。いずれの先生もインフリキシマブがぶどう膜炎の治療体系を変え、現場ではシクロスポリン抵抗例だけなく、より早期の症例に導入が進み、完全にぶどう膜炎を制御することが重要だと強調されました。また、園田先生には眼外症状、副作用を管理するため、膠原病内科との連携によるチーム診療について、北市先生は個々の患者さんの病状に応じたインフリキシマブの投与間隔を設定するための血液検査(バイオマーカー)の必要性を述べるともに、ポストインフリキシマブを見据えた実験的ブドウ膜炎を用いた調節性T細胞誘導療法について発表されました。

次いで、消化器内科の久松先生が従来の治療に抵抗する6例の腸管ベーチェット病に対するインフリキシマブ治療成績について述べられました。うち4例では期待通りの効果が見られましたが、インフリキシマブ投与前に回腸巨大潰瘍を呈していた例、回腸結腸瘻孔を形成していた例では無効であり、手術に至ったとの報告でした。やはり、適切な時期、できれば早期にインフリキシマブを使用することの重要性が強調されました。

最後に、菊池弘敏先生(帝京大学内科)がベーチェット病の最も難治性病態と言える慢性進行性神経ベーチェット病に対するインフリキシマブ治療について報告されました。この病型は若年にして認知症や人格変化をきたし、社会的に問題になることもあり、それだけにインフリキシマブ治療の効果も注目されます。菊池先生は進行抑制効果がある可能性があることに加え、神経・精神症状の難治化、治療抵抗性の要因に喫煙があることを発表されました。

まだまだ、ベーチェット病のインフリキシマブ治療はスタートしたばかりで、期待も大きい半面、これから多くの課題も出てくるかと思います。本シンポジムにおいて診療科の枠を越え、この新しい治療法につき討論できる機会を得たことは、今後を考える上で大変貴重な機会なものであったと思います。

岳野光洋(横浜市立大学大 リウマチ・血液・感染症内科)

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