学会・研究会トピックス
国際学会・研究会レポート:日本・韓国合同研究会
2011/12/16
第3回 日本・韓国合同ベーチェット病会議
会期:平成23年12月16日
会場:横浜市立大学 福浦キャンパス
参加者数:50人(海外参加者 韓国4人、トルコ1人、英国1人)
今回の班会議は、研究分担者、研究協力者の年度の研究成果報告に加え、第3回日本・韓国合同ベーチェット病会議を開催した。平成23年度 第二回厚生労働省ベーチェット病班会議では、各病型の診療ガイドラインの作成と改訂に向けての検討、GWASで明らかにされた遺伝子素因と臨床像や治療反応性の解析、抗TNF抗体治療の問題点などを討議した。
また、これに引き続き開催した第3回 日本・韓国合同ベーチェット病会議では、免疫学的病態に関する演題を中心に、韓国、日本より3名の演者がそれぞれの研究成果を発表した。残念ながら、Cho, SB 先生(韓国Yonsei University College of Medicine) が病欠のため、急遽、Bang D 先生(韓国Yonsei University College of Medicine) がPsoriasis in patients with Behcet’s disease を発表された。本会には、International Society of Behcet’s Disease(ISBD)より Wallace G (英国)、Direskeneli H(トルコ)もゲストコメンテーターとして参加し、活発な議論を行い、有意義な情報交換ができた。
翌12月17日にはISBD役員が2012年7月に開催される第15回国際ベーチェット病会議(International Conference on Behcet’s Disease: ICBD)のSite Visitが行われた。会場であるパシフィコ横浜を訪問したほか、プログラム、運営面での準備状況が確認された。
11/13 第二回 韓国日本ベーチェット病合同会議
2007年横浜以来、2回目の合同会議が11/13ソウル国立大学で開催されました。日本からは、厚生労働省のベーチェット病に関する調査研究班より、石ヶ坪良明研究代表者(横浜市大)、金子史男前班長(南東北病院)、中村晃一郎先生(埼玉医大)、蕪城俊克先生(東大)および岳野が出席しました。会議では日本演者と韓国演者が関連するテーマにつき演題を発表し、討論するという形式で行われました。
まずは、眼科的テーマで、蕪城先生は日本のベーチェット患者における1980年代とそれ以後の眼病変について比較検討し、視力予後が改善してきていることを報告しました。韓国側からYu 先生が蛍光眼底所見の有用性について発表しました。また、疾患による汎ぶどう膜炎だけでなく、白内障を始めとした合併症が視力予後に影響を及ぼしていることから、ステロイドに依存しない免疫抑制療法、生物学的製剤治療の必要性を強調しました。次いで免疫学的メカニズムについての発表で、日本の中村先生は連鎖球菌抗原に対する免疫応答の異常とその病因的意義につき報告し、Sohn先生はベーチェット病様モデルマウスを用いて、調節性T細胞の移入が治療的効果をもたらすことを示し、治療応用への可能性を示しました。腸管病変に関しては、岳野が日本における腸管ベーチェット病診療ガイドラインの作成の過程を紹介したあと、韓国からはCheon先生が内視鏡所見と腸管外症状の組み合わせに基づく、新しい腸管ベーチェット病診断基準を提唱しました。最後に、Lee先生はベーチェット病はHLA-B51を始めとした遺伝素因について、石ヶ坪先生はインフラマゾーム関連遺伝子の病因的意義について発表し、病態への関与と合わせて、治療応用への可能性について言及しました。
韓国人と日本人の人種的距離を考えた場合、当然なのかもしれませんが、中近東やヨーロッパと比べると、ベーチェット病の臨床像が類似しており、韓国と日本で共通の問題点を抱えていることが改めて認識されました。現時点で次回の定期的開催の予定は立てられていませんが、韓国ベーチェット病研究者と交流をつつけていくことが双方の国のベーチェット病研究に意義あるものと思われました。
蕪城俊克先生(東大)
この会議に先立って、11/12には3,000床を誇る韓国一の大病院、Yonsei University Severance Hospitalを見学しましたが、実にすばらしいものでした。船の形をした20階建てのモダンなビルの玄関を入ると、高い吹抜けに上品な装飾品が並んでおり、大学病院の受付というより一流ホテルのフロントロビーという感じです。各科外来に自動精算機が設置されおり、日本の病院では当たり前の受付での行列はは見当たりません。フードコートにはショッピングセンターさながらにバーガーキング、Haagen Dazsなど10店舗程並でいました。また、この豪勢な施設を案内してくれたのは、専任の病院ツアーガイドで、英語で説明してくれました。診療レベルも世界超一流の証しであるJCI(Joint Commission International)の認定を受けており(日本にはない)、語のほか日本語、中国語、ロシア語など諸外国語を話せるスタッフがいて、外国人患者にも十分対応できるといいます。みんな、「それに比べて自分の大学病院は……」としばし言葉を失ってしまいました。チャンスがあれば、是非とも一度見学されることをお勧め致します。
Yonsei University Severance Hospitalの玄関前
左から蕪城、岳野、金子、石ヶ坪、中村各先生
北海道大学眼科・北市伸義氏がAPIISG最高貢献賞若手研究者賞を受賞
2009年11月6日、北海道大学の北市伸義先生(眼科学)が「APIISG最高貢献賞若手研究者賞」を授与され、第2回国際ぶどう膜炎/第3回アジア太平洋内眼炎/第8回中国眼免疫学合同学会(中国・重慶市)で受賞講演を行いました。
アジア太平洋内眼炎症研究会(APIISG)はシンガポールに本部をおく眼のぶどう膜炎等を研究する国際組織です。日本、中国、アメリカ、オーストラリア、インド、台湾、韓国、シンガポールなどを主要参加国として2年に一度学術集会を開催し、最先端の研究成果の発表や意見交換、提言等を活発に行なっています。
本賞は今回新たに創設されたもので、今後2年ごとに当該分野での研究の発展に最も貢献した、アジア太平洋諸国で活躍する若手医師・研究者1名を選出します。第一回受賞者の栄誉を得た北市先生は世界14カ国25施設のベーチェット病国際疫学調査を主導し、民族や人種によるベーチェット病の臨床像の特徴を明らかにしました。その成果の一部は2007年度の本研究班会議でも報告されました。
左から 大野重昭・北海道大学炎症眼科学講座教授、北市氏、
N. Rao 南カリフォルニア大学(アメリカ)教授
北海道大学眼科・北市伸義氏がARVO/アルコン研究賞を受賞
2009年5月3日、北海道大学の北市伸義先生(眼科学)が「アメリカ視覚眼科学研究協会(ARVO)アルコン研究賞(ARVO/Alcon Research Award)」を受賞され、アメリカ・フロリダ州フォートローダーデイルにおいて受賞式が挙行されました。
アメリカ視覚眼科学研究協会会議(ARVO)は世界最大・最高峰の眼科学/視覚研究学会であり、2009年度も世界中から15,000名以上の参加者を迎えて開催されました。毎年その中で最も優れた研究を行った5人の医師研究者(clinician-scientist)に本賞が授与されます。
ぶどう膜炎は失明につながる重篤な眼疾患であり、その病態には炎症性サイトカインの一種TNF-αが関与しています。現在、関節リウマチ、クローン病、ベーチェット病等に対し、抗TNF-α抗体の全身投与による治療が行われていますが、ぶどう膜炎の治療において同抗体の眼局所投与はこれまで試みられていませんでした。同氏はぶどう膜炎の動物モデルを用いて同抗体を眼内に直接投与し、劇的な効果を示すとともに全身副作用をほぼ完全に回避することに成功しました。このことが高く評価され、日本人3人目の受賞者となりました。研究成果の一部は2009年度の本研究班会議でも報告されました。
授賞式でARVO研究財団のG. Abrams 議長(アメリカ)から授与