新型コロナウィルス関連情報
ベーチェット病と新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に関する情報
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行に伴い、ベーチェット病への影響はどうなのか不安を持つ患者さんも少なくないかと思います。一般的に言われているマスクの着用、手指消毒の徹底、三密(密集、密接、密閉)を避けるなどはベーチェット病の患者さんでも変わることはありませんので、本ホームぺージでは、できるだけベーチェット病に関連する情報を中心にお伝えしたいと思います。
今後、情報が蓄積されるにつれ、その内容も変わる可能性があることについては、ご承知おきください。
Q1. ベーチェット病患者は感染しやすいか?
現時点で、ベーチェット病が特にCOVID-19に罹患しやすいというデータはなく、その情報も限られています。
Q2. ベーチェット病の治療はCOVID19感染に影響するか?
ベーチェット病に対する治療薬、コルヒチン、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、TNF阻害薬により、COVID-19にかかりやすくなるというデータはありません。感染の疑いがなく、特に担当医からの指示がない場合は、これまで通りに治療を継続してください。
Q3. COVID-19感染に罹った場合、ベーチェット病に対する治療はどうするか?
万一感染したさいには、患者さんの状況に応じた対応が必要になります。ベーチェット病の治療薬に関しては担当医と連絡を取り、投薬の指示を受けてください。自己判断での中止や減量は禁物で、特に副腎皮質ステロイドは中断しないようにして下さい。これまでの論文、web上に報告されたCOVID-19感染を合併したベーチェット病患者においては、副腎皮質ステロイド、コルヒチンは継続され、免疫抑制薬、抗TNF抗体製剤についてはケースバイケースで対応されています。特に重症化した場合、日ごろのかかりつけの病院と別の感染症指定医療機関に入院する可能性もありますので、入院担当医と日ごろの主治医との間で十分連絡を取っていただくことも重要になります。
Q4. COVID-19感染に罹った場合、ベーチェット病患者は重症化しやすいか?
これまでのところ、特に重症化しやすいという報告はないようです。
Q5. COVID-19感染に罹った場合、ベーチェット病自体が悪化する可能性があるか?
COVID-19感染罹患と症状増悪との関連は明確には示されていません。これまでの報告では、一部の患者に口腔内アフタ性潰瘍など皮膚粘膜病変の症状が出現や新規の深部静脈血栓症が出現した症例が報告されていますが、抗TNF抗体製剤の休薬などもあり、感染の疾患活動性にどれくらい影響したかは判断できません。COVID-19感染時に血栓形成リスクが増大することはベーチェット病に限ったことではありませんが、注意すべきと思われます。
Q6. ワクチンを接種すべきか?
ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤では生ワクチンは禁忌になりますが、現在、COVID-19に対するワクチンはメッセンジャーRNAワクチンあるいはウイルスベクターワクチンですので、これらの治療のための接種できないということはありません。
日本リウマチ学会では関節リウマチや膠原病患者で、ステロイドをプレドニゾロン換算で5mg/日以上または免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤のいずれかを使用中の患者は他の人たちよりも優先して接種した方がよいとされており、このことはベーチェット病患者にも当てはまると考えられます。実際、2021年1月に国際ベーチェット病学会の臨時会議では接種することが前提で討論が進められました(学会報告にリンク)。
メッセンジャーRNAワクチンやウイルスベクターワクチンはこれまでにどの感染病原体のワクチンとしても使われたことがないものですので、安全性に関しては今後も情報を蓄積していく必要はあると思われます。
個々の患者さんの状態にもよりますので、担当医とよく相談したうえで接種の可否を判断してください。
Q7. ワクチン投与のベーチェット病への影響は?
十分な情報はありません。COVID-19ウイルス感染自体がベーチェット病増悪を来すかどうかも明らかではありません。ワクチンに含まれるはウイルスの一部のメッセンジャーRNAにすぎませんので、理論的にはそれほど危険とは考えにくいかもしれません。他のリウマチ性疾患と異なるベーチェット病特有のものとして針反応がありますが、そのために接種を控えるべきとは考えられていません。
また、リウマチ系疾患全般において病気が落ち着いていない時のワクチン接種は推奨できないとされています。ベーチェット病が悪化した場合は、その治療を優先させ、可能であれば、疾患活動性が安定した時期での投与が望ましいと考えられます。
Q8. ワクチン接種時の治療はどうするか?
日本リウマチ学会ホームページの記載、先の国際ベーチェット病学会の臨時会議でも、通常のワクチンと同様、原則としてステロイド、免疫抑制薬を中止・減量する必要はないとされています。生物学的製剤の種類によっては対応が必要なものもありますが、ベーチェット病に使われるTNF阻害薬もスケジュール通り投与してよいであろうとされています。個々の患者さんの状態にもよりますので、具体的にどうするかについては、担当医とご相談ください。
なお、ワクチンに関する記載は、メッセンジャーRNAワクチンやウイルスベクターワクチンを前提としたものであり、有効性や安全性の情報は今後蓄積されてくること、また、他の新規ワクチンにはかならずしも当てはまらない可能性もあることにご留意ください。
関連情報 リンク先
・日本リウマチ学会
https://www.ryumachi-jp.com/information/medical/covid-19_2/
・日本炎症性腸疾患学会
http://www.jsibd.jp/office.html
・日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31
・日本環境感染症学会
http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=328
・国際ベーチェット病学会(International Society of Bechcet’s disaes:ISBD)
http://www.behcetdiseasesociety.org/menu/57/clinical-experience-of-bd-and-cov%C4%B1d-19
今月に入り、再び患者の増加傾向がみられ、緊急提言も出されています。
冒頭にも書きましたように、基本的な感染予防策はベーチェット病の罹患の有無に関係ありませんので、これらの情報にも十分ご留意ください。
令和3年3月2日更新
日本医大武蔵小杉病院リウマチ膠原病内科
岳野 光洋