ここが聞きたい(患者様用)

ベーチェット病の診療に関してのご質問は、以下の[ご質問はこちらから]ボタンからお寄せください。ベーチェット病に関する調査研究の事務局、内容によっては研究班の研究分担者、研究協力者の先生より回答いたします。

(※設定によっては、事務局からの回答メールが受信できないことがあります。回答をご希望される場合は、事前に「ドメイン指定受信を解除する」又は「ドメイン指定受信に『@nms.ac.jp 』を設定する」ことにより、事務局からの回答メールが受信できるようにお願いします。
なお、「ドメイン指定受信の解除」又は「ドメイン指定受信の設定」については、操作マニュアルをご参照ください。)

また、このあとにこれまでベーチェット病友の会などに寄せられた質問のうち、比較的よくある質問に対する回答を書いておりますので、ご参照ください。ただし、これは標準的な回答であり、患者さんの状態、状況によっては、違う答え方をする場合もありますので、ご了承ください。

1.専門の病院、医師を教えてください。
このホームページに眼科、内科、消化器内科、皮膚科などでベーチェット病診療に携わる先生のリストを紹介していますので、ご参照ください。
ベーチェット病の症状は多様であり、受診が必要な診療科も患者さんの病状により違ってきます。複数の診療科に受診が必要な場合もありますので、現在受診している診療科以外の受診を希望されるときは、よく担当医と相談してください。
2.治療法や薬について教えてください。
ベーチェット病のすべての症状に効く特効薬というものがあるわけではありません。症状に応じて治療薬の選択も違ってきます。また、同じ患者さんでも病気の勢いや重症度により治療法を変えていく必要があります。このホームページでも標準的な治療法につき紹介していますので、ご参照ください。
これらはあくまでも標準的な治療であり、実際の治療にあったては、患者さんの病状はもちろん、合併症や既往症、年齢、性別なども考慮しなければなりません。また、医療現場ではここに書かれた以外の治療薬も使われることもあります。
3.プレドニンを服用しています。長期の服用や量について心配することはありませんか。
プレドニンをはじめとした副腎皮質ステロイド薬はベーチェット病以外にも多くの病気に使用され、大変優れた効果を持っています。しかし、その反面副作用も少なくなく、特に長期服用時には問題になります。
副腎皮質ステロイド薬はベーチェット病の場合、軟膏や点眼薬を除くと、神経型、腸管型、血管型などの特殊病型ほか、眼発作の急性期にも使用されることがあります。原則として、病状が重いときほど大量のステロイドが必要で、病気の急性期にはステロイドパルス療法という超大量療法が試みられることもあります。病気がおさまれば、徐々に減量していき、可能であれば中止します。しかし、ステロイド薬の減量とともに症状の再燃がみられることもあり、スムーズに減量で きないこともあります。
副作用が多いことを懸念され、患者さんから「そのほかに治療薬がないか」と聞かれることもよくありますが、残念ながら現時点では完全にステロイド薬にとってかわるものはありません。眼病変に使われているインフリキシマブ(抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体)が、これまでステロイド薬が治療の中心であった特殊病型に対しても使用しようという試みがあり、その効果が期待されていますが、まだまとまった成績はなく、また認可もされていません。
口内炎や陰部潰瘍に対する局所ステロイド軟膏の塗布はよく効きますし、副作用をさほど気にする必要はありません。眼病変に対しては点眼薬のほか急性発作時の眼内注射を使用することがありますが、ブドウ膜炎に対する長期のステロイド薬の内服はむしろ視力予後を悪くするという成績も示されたこともあります。
副腎皮質ステロイド薬の具体的な副作用ですが、抵抗力の低下による易感染性(風邪をひきやすく、こじらせやすい)、糖尿病、高血圧、胃潰瘍、不眠などの精神症状、骨粗鬆症などいろいろな副作用が知られています。また、眼病変を伴うことが多いベーチェット病の患者さんでは白内障や緑内障が問題になることもあります。これらはすべての患者さんに必ず起こるわけではありませんが、胃潰瘍や骨粗鬆症など予防可能なものはそれぞれの予防薬を併用するのが一般的です。また、これらの副作用に関して、定期的に血液検査によるチェックも必要でしょう。
4.病気は遺伝しますか。結婚はできるのでしょうか。
ベーチェット病の病因に遺伝素因は大きなウェートを占めていますが、決して遺伝病ではありません。口腔内アフタができやすいと多少の体質的な遺伝はあるかもしれませんが、病気として遺伝するわけではありません。実際、日本での家族内発症の報告はまれです。結婚などにさいして、病気の遺伝を大きな問題とする必要はないと思います。
5.結婚・妊娠・出産はできるか。奇形ができるとも聞いているが、特にプレドニンやコルヒチンとの関係を教えてください。
ベーチェット病の方で妊娠・出産されている方はたくさんおられますので、この病気であるというだけで、妊娠や出産ができないというわけではありません。しかし、腸管、神経、血管などの臓器病変の強い時、眼病変に対して治療薬を使用しているときは制限されることがあります。質問のプレドニゾロンの場合、一日20mg以下であれば胎盤への移行が少なく胎児への影響も少ないと言われていますが、病状としてプレドニゾロン20mg/日の服用が必要な状態での妊娠はあまり勧められるわけではありません。また、この薬がよく使われる他のリウマチ性疾患の経験からもプレドニゾロン10mg/日以下で病状が落ち着き、再燃の兆しがない状態での妊娠が望ましいと思います。
コルヒチンは胎児に染色体異常や奇形を引き起こす可能性があることから、添付文書上妊娠時には禁忌とされているほか、男性に対しても精子に影響が出ることがあるとされています。眼病変に対するシクロスポリン(ネオーラル)も禁忌とされていますので、これらの薬剤の服用中に妊娠を希望するとき、妊娠が判明したときは担当医と十分に相談していただきたいと思います。
6.ぶどう膜炎の症状があるのですが、失明する可能性はどれくらいありますか?
ベーチェット病のぶどう膜炎は両側性に生じることが多く、以前はぶどう膜炎が生じた場合の失明率は30~40%という数字も出ていましたが、1990年代以降のシクロスポリンの導入により治療成績は向上しましたが、それでも約20%の方が失明にいたるとされてきました。しかし、2007年からインフリキシマブ(抗腫瘍壊死因子抗体)が使われるようになり、これまでシクロスポリンなどが効かなかった患者さんでさえ、発作が抑えられ、眼病変の進行が阻止されています。最終的にどのくらいの方が失明から救われるのか、長期的な効果については今後の成績の蓄積を待たなければなりませんが、大いに期待されます。
7.HLA-B51が陽性です。ベーチェット病との関係を教えてください。
HLAとはhuman leukocyte antigenの略称で、和訳するとヒト白血球抗原になります。白血球の血液型と考えていただくと理解しやいかと思いますが、実際には白血球以外にも存在しています。臓器移植のときには、臓器提供者と移植を受ける人の間でこのHLAのタイプが一致していることが重要ですが、HLAはもっと広くその人の免疫反応を規定しています。そのためHLAの特定のタイプと関連する疾患がいくつか知られています。ベーチェット病はその代表的なものであり、日本のみならず諸外国でもHLA-B51の患者さんが多いことで知られています。日本人でHLA-B51を持っている人は15-20%ですが、ベーチェット病患者では50-60%にのぼり、特に眼病変を有する方や神経症状を発症する方ではその比率が60-70%になるとされています。しかし、この数字を計算してみます と、確かにHLA-B51陽性の人は他の人より5-10倍ほどの確率でベーチェット病になりやすいという計算になりますが、それでも1,500人に一人程度にすぎません。診断基準上も参考所見という位置づけにあります。病気の原因を考える上では、HLA-B51そのものあるいはそれに関連した遺伝子の役割は非常に重要だと思われますが、決してベーチェット病の発症を既定する因子ではありません。
8.日常生活上の注意点は何ですか?
この病気は発作性に症状が出現する病気です。身体的なストレス、寒冷などの気候の変化が発作につながることがありますので、疲れをためない、規則正しい生活を送ることなどが基本的な事項になります。
口腔内の衛生を保つこと、虫歯や歯肉炎、扁桃炎などをきちんと治療しておくことも重要です。これらの病変によりしばしば病気の悪化を経験します。また、虫歯の治療中にも一過性に口腔内アフタ性潰瘍が多発するなどの増悪をみることがあります。こうした口腔内衛生の重要性は、口腔内に存在する連鎖球菌という種類の細菌と病気との関連の研究からも明らかにされようとしています。
喫煙も特に神経症状の出現に関連しているという成績が示されており、その点からも控えた方がよいと考えられています。
9.口内炎が繰り返しでき、出来物も太もも、腕、顔と色々な所にできてしまいます。また膝の痛みもあり、2㎝程の紅斑らしきものも出来たことがあります。受診をしてもよいものでしょうか、またどのような時に受診をすれば一番よろしいのでしょうか。
ベーチェット病は経過を通しての症状の組み合わせで診断する病気です。
症状の強い時には、血液検査において白血球増多、血沈促進、CRP高値などの異常が見られますが、これらはベーチェット病以外の炎症疾患や感染症でもみられますので診断の決め手にはなりません。
また、ベーチェット病は膠原病類縁疾患という範疇に入れられることがありますが、通常血液検査では膠原病で検出される抗核抗体やリウマチ因子が陽性になることはありません。
口内炎のほかに、毛のう炎、膝の痛みはベーチェット病の症状にあげられるものですが、これらの症状を組み合わせても現時点ではベーチェット病疑い例にとどまると思います。その他頻度の高い症状としては、眼症状、陰部潰瘍があり、これらの症状が出現したときはベーチェット病である可能性が高くなります。眼症状は知らないうちにだんだん悪くなるというようなことはほとんどなく、発作として痛みや視力障害が生じます。ベーチェット病の疑いがもたれたのであれば、一度は眼科を受けておいた方がよいかと思います。
受診のタイミングとしては、症状が出ているときに受診するのが良いかと思います。
10.友人が妊娠をきっかけに再発し感染予防に帝王切開を進められたそうです。陰部に異常(潰瘍)がなくても、帝王切開が良いのでしょうか?
ベーチェット病の症状と性周期、性ホルモンには関連がみられることがあり、
妊娠していないときでも生理時に陰部潰瘍が悪化することがあります。
したがって、妊娠で性ホルモンのバランスが変わり、症状が出現する可能性はあります。「感染予防のための帝王切開」については陰部潰瘍があるときは意味があると思いますが、患者さんの状態をよく把握している担当医と相談することが大事だと思います。
11.10年くらい前にベーチェット病と診断され、この7、8年は症状が出ていませんでしたが、今年妊娠したのが原因なのか舌に口内炎がひっきりなしに出来たり陰部の内側にも出来たりしてます。
病院からはアラセナーΑを貰っており、1ヶ月経ちますが良くなりません。この頃は歩く事も座る事も寝る事も苦痛です。
ベーチェット病の陰部潰瘍はしばしばヘルペスウイルス感染病変に類似したものであることがあり、ヘルペスウイルス感染がベーチェット病を増悪させると考える学説もあります。
現在使用されているアラセナーΑはヘルペスウイルス感染症の特効薬ですが、べーチェット病の陰部潰瘍には通常、ステロイド軟膏を用います。
しかし、ヘルペスウイルス感染症にこのステロイド軟膏を使うと悪化するおそれがありますので「10年くらい前にベーチェット病と診断された事がある」ことをもう一度、担当の先生に相談してみてください。
12.昨年ベーチェット病と認定され、プレドニン5㍉、コルヒチン0.5㍉、ワーファリン2.5㍉ガスターD20㍉、アルサルミン1g、シナール1gを飲んでいます。ワーファリンは、動脈瘤が2ヶ所見つかり手術した為飲んでいます。アルサミン、シナールは、そのあと消化管下血を2回起こした為飲んでいます。プレドニンは10ミリから始め、1ヶ月毎に1ミリづつ減らして現在に至っていますが、最近体のあちらこちらが痛くてたまりません。
ベーチェット病で内服ステロイドが絶対的に必要になるのは、神経、腸管、血管などの特殊病型の時です。関節炎などで他の薬剤の十分な効果が得られない時にはやむを得ず短期的に使用してみることはありますが、このような時は血液検査で炎症所見(白血球増多、CRP高値、血沈亢進)が見られるのが一般的です。
ステロイドは良い薬ですが、服用量が多ければ多いほど、服用期間が長ければ長いほど色々な副作用が出やすくなりますので、血液の炎症所見が落ち着いてるのであれば、担当医が痛みの原因は別のことではないかと考えて、ステロイドの減量を考えるのは妥当だと思います。

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